モノとの親密な関係

オーラソーマ#100


モノが自分の色になる、っていう感覚、わかるだろうか?
あらゆるモノはその所有者の雰囲気に染まる。
モノだけじゃないな、植物とかも育てている人の雰囲気に染まる。


新品っていうのはなんかツンとしていて、尖っている。
それがだんだん自分の物になってくるにつれて
その角のようなものが取れてくる。
そして自分に馴染んだ独特の雰囲気を得てゆく。


私が今使っている部屋は1年ほど前まで祖母の部屋だった。
最初は濃厚に彼女を映し出していたその部屋が、ずいぶん私の部屋になって来ている。
それでもまだベッドの頭のほうの棚の片隅とかに祖母を感じる。


子供の頃には、クラスに一人くらい必ず「臭い」とか言われていじめられる子がいるもので。
別に本当に臭いわけではないのだけど、大半の子供たちとは異質な空気を醸し出している類の子がターゲットになる。
そして子供たちは(残酷にも)その子の持ち物にまでその痕跡を嗅ぎ取ってしまう。
いわゆる、「えんがちょ!」ってやつだ。
これを延長した感覚。


こうした異質なものを嗅ぎ分けて攻撃する方向だと
意味(臭い、きたない)と結び付けられ誇張されるのだけど。
でも、その感覚自体はもともと人間にあるんじゃないのかなあ?
共感覚と同じで、必要ないから退化してゆくもの。
残留思念を追う超能力者なんてのもいるらしいし。


警察犬の嗅覚は一週間も前の人間の痕跡を見分ける。
匂いって物質でしょう?
そんなに長く漂っているものか、と思うけど、どうもそういうものらしい。
その人の衣服の繊維の埃とかそういう物質なんだろうな。
人間がこれをなんらかの形で感じ取っているとしても不思議ではないのかもしれない。
そして、私のようなあらゆる感覚が視覚イメージと結びついている人には、
それが「なんか尖っている」とか「角が取れてきた」なんていう視覚イメージとして感じとられるのかもしれない。



さて、イクイリブリアムボトルなんだけど、
私がこいつらをとても好きだからなのか、
彼らそのものに魔力のようなものがあるのかは知らないが、
半端なくそういう微細なものを映し出す。

予想通り、#100は最初に手にしたとき怖かった。
その下層の暗いマジェンタの深いこと、
そしてそれをすべて意識に晒そうとするかのようなクリアカラーの潔さ。
そのコントラストの強さが怖かった。
「あなたにはこれを受け入れる勇気があるの?」
と問いかけられているようで。

それが枕元においている間に変わってきた。
つまり、
私の変化した気持ちを映し出してきた。
もう怖くない。
角がやわらかくなっている。
光もやさしくなっている。
もういつでも使うことが出来る。

「自分を映し出す鏡」とはよく言ったものだなあ。